以前、かまきりりゅうじ(本名は工藤直子)の『おれはかまきり』について考察し、それ以来どっぷりと工藤直子節にハマってしまった僕ですが、いくつかの作品を詠んでいるうちにこんな詩を見つけました。なんと工藤直子さんが『おれはかまきり』を書いたときに用いた、かまきりりゅうじというペンネームで別の作品が描かれていました。題名は『てれるぜ』というものです。同じペンネームということは何かつながりがあるのではないか、続編なのではないか、ということで今日は『てれるぜ』について述べていきたいと思います。
『おれはかまきり』を知らない方はこちらの記事からお読みください!
以前僕が『おれはかまきり』について書いた記事です。
かまきりりゅうじというのは、詩を書く時のペンネームであり、本名は工藤直子(くどうなおこ)といいます。また、彼女は台湾嘉義に生まれた日本の詩人であり童話作家でもあります。かまきりりゅうじの前作には、上記にも述べたように『おれはかまきり』という詩も存在します。そして今回考察するのは『おれはかまきり』の続編かとも思われる『てれるぜ』という詩です。
『てれるぜ』の詩はこちらです。
てれるぜ
かまきりりゅうじ
もちろん おれは
のはらの たいしょうだぜ
そうとも おれは
くさむらの えいゆうだぜしかしな
おれだって
あまったれたいときも
あるんだぜ
そんなときはなあ
おんぶしてほしそうな
かっこになっちまってなあ
・・・・・・・・
てれるぜ
『おれはかまきり』と同様に、語尾に「だぜ」がついていることや、「もちろん」「たいしょう」「えいゆう」などといった自信満々な言葉などから、『おれはかまきり』の主人公と同じ人物だと感じます。そう考えるとやはり『てれるぜ』は『おれはかまきり』の続編なのではないかと考えられます。
しかし『てれるぜ』の第2節目では『おれはかまきり』での盛んでイキった様子とは程遠く、嘆いている様子が描かれています。これは一体どういうことなのか。そこで前回同様かまきりの生態を調べ、それを用いることで『てれるぜ』の更なる考察を進めていこうと思います。
まず、第1節の内容についてです。第1節では、自分のことを「のはらのたいしょう」「くさむらのえいゆう」と述べています。これは、成虫になったカマキリはセミやチョウ、バッタやハエなどの野原や草むらにいる昆虫を捕食することに基づいていると思います。またカマキリは大きさによっては、自分よりも大きいヘビやクモ、カエルやトカゲなど昆虫以外の小動物を捕食することもあるといいます。まさに野原の大将ですね。前回の調査でかまきりは夏に成虫になるということが分かりました。『おれはかまきり』の時点で時期は夏だったので、続編である『てれるぜ』でももちろん成虫になっていると考えられます。だとすると狩りのシーズン中で「のはらのたいしょう」「くさむらのえいゆう」といった表現にも納得がいきますね。
そして問題の第2節。なぜ『おれはかまきり』の中であんなにイキっていたかまきりの意気が消沈し始めているのか。僕が考えたのは、このかまきりに寿命が近づいているからではないか、ということです。
前回の考察で、かまきりの寿命は約7か月で、その時期は4月から11月だということが判明しました。つまり秋には亡くなってしまうということです。それを踏まえて考えると、『おれはかまきり』の時期は夏真っ只中、7~8月あたりだと思います。それならば続編である『てれるぜ』は秋に差し掛かっているのではないでしょうか。
人生の盛んな時期もそろそろ終わり、人生を謳歌するため結婚のことは考えていなかったかまきりもそろそろ結婚を考える時期になってきたのです。そのため人肌(この場合はカマ肌?笑)恋しくなってきて「あまったれたいときもあるんだぜ」と嘆いていたのではないでしょうか。そう考えると、うまくまとまりがつきそうです。トガってた時期が終わり、丸くなって将来のことを真剣に考えるようになってきたのですね。まるで人間みたいですね。
2作に渡って主役を務めたかまきりくん。彼の将来は今後どうなってしまうのでしょうか。僕なりに考えてみました。
まず、かまきりくんは生き生きとして明るい性格に加え、狩りもおそらく得意ということから、いずれいい奥さんが見つかり結婚できると思います。しかし忘れてはいけないのは、カマキリのメスは産卵期になるとオスを食べてしまうということです。これについてさらに詳しく調べていると、「健康な体のオスほど、メスが途中で自分を食べるのに飽きて自由になれると信じている」ということが分かりました。『おれはかまきり』で生き生きとしていたかまきりくんはおそらく健康的。だとするのならば、奥さんを心から信じ続け、食べられ続けるのではないかと考えられます。とても切ない結末ですね。
その分、メスには栄養が蓄えられるため、普通のメスよりも約2倍の卵を産むと言われています。妻のために身を捧げたかまきりくんのためにも、彼の子どもがたくさん生まれることを望みます。
たくさんの子どもたちから
「僕たちはかまきりだじぇ!!」
と聞きたいですね。
2作に渡るかまきりりゅうじの作品。考察してみるとやはりとても良い作品だということを改めて実感しました。工藤直子の他の作品も引き続き考察していきたいと思います!
では今日はこの辺で!